【立憲フォーラム】
日本学術会議は、第2次世界大戦後に新生日本における科学の役割への期待とともに創設された(略)。その法的基礎は、1948年制定の現行日本学術会議法である。その前文は、日本学術会議が「科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と連携して学術の進歩に寄与することを使命として」設立されたと宣言している。
このような発展を基礎に、さらに日本学術会議が現代世界の人類的課題に取り組んで、社会と政府に対し科学的助言をより有効かつ適切に行いうるためには、機能強化とそのための改革が必要である。しかるに、特殊法人という法形式の下に日本学術会議の運営と活動を政府が幾重にも管理するやり方は、日本学術会議の固有の発展を阻害し、75年余にわたつて培われてきた学術に基づいて社会と政府に発信するという機能を弱体化させ、ひいては日本の学術の終わりの始まりとすることになりかねない。
21世紀の課題に向けての日本学術会議の改革は、日本学術会議を改革主体とし、日本の科学者コミュニテイおよび国際的な科学者アカデミーの支援の下に、社会、産業界、行政からの代表者が参加し、日本の科学・技術行政の全体の在り方を再構築する展望をもつて、日本学術会議のミッシ∃ンをあらためて位置づける、公正で開かれた審議の場が必要である。
石破首相に対して、この課題を実行する英断を重ねて要請するものである。
(2月 18日「石破茂首相に対して『日本学術会議法案(仮称)』の撤回を求める声明」より抜粋)
◆梶田隆章さん/東京大学卓越教授(宇宙線研究所)・特別栄誉教授
東京大学宇宙線研究所助手、助教授を経て1999年より教授。2008年から14年にわたり宇宙線研究所長を務める。2024年3月宇宙線研究所教授を定年で退職。2017年10月から2023年9月まで日本学術会議会員。2020年10月から2023年9月 まで第25期日本学術会議会長。
専門は宇宙線物理学・天文学。特にニュートリノと重力波の研究。「ニュートリノの質量の存在を示すニユートリノ振動の発見」により、2015年にノーベル物理学賞を受賞。