【高木基金「市民科学」公開フォーラム】
このフォーラムのねらい
高木仁三郎市民科学基金(高木基金)は、高木仁三郎(1938-2000)の遺志に基づいて2001年に設立され、仁三郎が目指した「市民科学」の考え方に基づいて、現代の科学技術や社会政策の負の側面に焦点をあてた調査研究活動への助成を行ってきました。設立からの23年間の助成実績は、国内およびアジアの個人・グループに対して合計459件、助成総額は2億4308万円となりました。これまでの助成事業の原資は、すべて高木基金の趣旨に賛同し、支援してくださる一般の市民からの会費や寄付で賄われてきました。
このフォーラムでは、高木基金の最近の助成研究から、「水の安全」に関わる先駆的かつ実践的な取り組みとして、ネオニコチノイド農薬とPFAS(有機フッ素化合物)に関わる研究を取り上げ、深刻化する水の汚染の問題を私たちがどのように考え、対処していくべきかを考えたいと思います。
午前の第1部では、ネオニコチノイド農薬とPFASの問題をテーマとした2本の映像作品を上映します。午後の第2部では、「水の安全」を守るための実践的な取り組みの事例を紹介します。この中で、高木基金の助成先である山室真澄さんと原田浩二さんに発表していただきます。第3部は、パネリストとして中下裕子さん、藤原寿和さんにも加わっていただき、会場・オンラインで参加のみなさんからの質問に応え、これから必要な取り組みなどについて、さらに議論を深めたいと考えています。
限られた時間ですが、有意義な議論と交流の場にしたいと考えています。関心をお持ちの多くの方の積極的なご参加を期待しています。
第2部:実践的な取り組みから考える
・「東京の水を守る取り組みを振り返る」
寺田良一(明治大学名誉教授)
・「水道水のネオニコチノイド濃度の全国調査」
山室真澄(東京大学新領域創成科学研究科教授)
★ 2022年度 高木基金助成研究
・「市民によるPFAS調査のための化学分析基盤の構築」
原田浩二(京都大学医学研究科准教授)
★ 2023年度 高木基金助成研究
■寺田良一(てらだりょういち)
明治大学名誉教授(環境社会学)。特定非営利活動法人有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)副理事長。研究テーマは、環境正義論、環境リスク社会論。佐賀大学在任中に水田除草剤CNPの汚染調査、都留文科大学在任中に多摩地域の地下水水道水源の有機溶剤汚染問題に関わり、その後、PRTR情報を市民に広めるTウォッチの活動に参加してきた。高木仁三郎市民科学基金 理事。
■ 山室真澄(やまむろますみ)
東京大学新領域創成科学研究科教授。農薬が水環境に与える影響について20年以上研究を続けてきた。2001年に公表した論文で、当時問題になっていた猛毒のダイオキシンの水圏での蓄積について、燃焼起源よりはるかに水田用除草剤(CNP・PCP)起源が多く、それらの除草剤が禁止になっても環境に放出され続けていることを明らかにした。2019年には、宍道湖ではネオニコチノイドによって節足動物が減少することで、それらを餌とする有用魚類(ワカサギ・ウナギ)の漁獲量が激減したことを発表し、世界的に評価された。これらの成果を一般向けに解説した書籍を出版してきた。
■ 原田浩二(はらだこうじ)
京都大学薬学部卒業。2007年に京都大学博士(社会健康医学)。同年、京都大学大学院医学研究科助教に採用。2009年に准教授に昇任し、現在に至る。2023年、環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議委員に任命される。2002年から京都大学の小泉昭夫教授(現名誉教授)の研究室でPFASの環境調査、バイオモニタリング、化学分析法の開発に携わってきた。近年、沖縄県や東京・多摩地区、大阪など各地のPFAS汚染地域での調査に取り組む。