30年中間貯蔵施設地権者会
門馬好春事務局長によるこれまでの環境省との交渉経緯の解説
福島県の中間貯蔵施設の地権者並びにサポート会員で構成する任意団体「30年中間貯蔵施設地権者会」で事務局長を務めさせて頂いております門馬好春と申します。今回は、中間貯蔵施設の概ね合意した地上権設定契約書の内容と現在協議中の用地補償額等の内容についてご説明させて頂きますのでよろしくお願いいたします。
■冒頭・経緯と全体像説明
2011年3月11日の東日本大震災後、東京電力福島第一原発の1-3号機が爆発し放射能のゴミを世界中に大量にまき散らし多くの被害が出ました。福島県内においては全域にフレコンバックに詰められた放射能のゴミが仮置きされております。それを、福島第一原発約330ヘクタールを囲むように大熊町、双葉町の一か所に集めるため中間貯蔵施設1600haを設置するということになりました。
地権者から協力の得られたところから工事を始め2015年3月13日からフレコンバックの搬入を開始しております。当地権者会は2014年5月、6月の環境省による町民説明会、9月、10月の地権者説明会で多くの方から出された質問や要望に対し環境省などからは誠意のある回答が出されませんでした。このために環境省に対する不信感を募らせた仲間たちと共に当地権者会を2014年12月17日に設立いたしました。
スタートは環境省等への不信感でした。
その後、契約書の内容について環境省と2015年1月から本年7月3日まで第20回の団体交渉を重ね地上権の契約内容について概ね合意に至り、現在は用地の補償額等について引き続き環境省と協議を行っております。
■土地利用方法
地権者の選択は、土地を貸す「地上権契約方式」と土地を売却する「土地売買契約方式」の2つがあります。国は始め全面国有地化の方針でしたが、石原元環境大臣の「金目でしょ」発言や「売却方針だけへの地元からの反発」から方針変換を余儀なくされたものです。
しかし、本事業の期限は2045年3月12日までですので、高速道路やダム建設の国等起業者による永久使用事業とは全く違います。地権者に返還する地上権設定土地も国が買収し国有地となる土地も、事業終了後の跡地は復興の為に使用することを福島県や大熊町、双葉町との4者協定書でも約束しています。
本事業について福島県民の「最大の心配ごと」は、福島県外最終処分場が決まっていないことです。中間貯蔵施設の政府公表の総額費用1.6兆円には施設の原状回復工事費、福島県外最終処分場建設費用、そこまでの運搬費用は含まれておりません。また、環境省が公表している工程表も最終処分場の方向性の検討だけというあいまいなものです。
■環境省との交渉経緯
今申し上げた経緯・背景を踏まえ環境省との交渉内容を具体的にご説明させて頂きます。
当会は会則でも中間貯蔵施設の必要性は福島の復興の為に認めております。ですので、反対のための交渉ではなく、法律や鑑定評価基準や補償基準に基づき正当な常識的な申し入れを環境省に行い、法律の専門家や不動産鑑定士の先生方のご指導を頂きながら前に進める為の交渉を行っております。環境省もこれを認めていることはこれからご説明させて頂きます契約内容の大幅な修正に応じたことでも明らかだと思います。
地上権設定契約書
当初、環境省が提示しました契約書は落とし穴が数多く仕掛けられておりました。契約日から2045年3月12日迄土地所有者の所有権を実質消滅放棄させる契約書でありました。また、期限終了後の翌日2045年3月13日以降も環境省が土地を使うことが出来るように仕組まれていると取らざるを得ない内容でした。
2015年3月、第3回団体交渉で当地権者会に環境省が提示した当初の契約書案と本年7月3日合意した契約書案を比較してご説明いたします。当初の契約書案について環境省は「決定した契約書なので絶対に変更することはない」と言って提示しました
【映像に図表あり】
福島県中間貯蔵施設に関する地上権設定契約書の当初環境省提示案と7月3日合意契約書の比較表
補償価格「土地価格」「地上権価格」
福島地方環境事務所長1号・2号文書
■最後に
何故交渉を続けられるのかとよく質問を受けます。やはり不信感が今もあること、最終処分場が決まっていないことがあります。また、安全の確保、事業終了後の復興の問題もあります。そして多くの被害者の方が原発事故の避難で疲れ切っていることから「今の被害者が正当な契約と正当な補償を受ける」こととが必要だと考えております。
今の人が出来ることをしないと、将来の子供たちに心配だけ、リスクだけを背をわせてしまう事になります。そして将来このような事故は決して2度と起きては、ならない、起こしてはならことですが、同様の公害事故が発生した場合、被害者と加害者の双方が今回の福島原発事故に起因した国による中間貯蔵施設事業の進め方の事実を踏まえて頂くことにより、被害者の方が不当な2次被害を受けないですむことが出来る一助になるのではないかともと思います。
法律や補償基準等の決まりごとに則り、原理原則を守り、筋目を通して、根気よく仲間と共に各専門家の先生方のご指導を頂きながら、環境省に1つ1つ事実を示して交渉を続けた結果、地上権設定契約書は約30項目の修正となりました。今後も正当な要求交渉を仲間と共に続けますので、ご支援ご協力をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
30年中間貯蔵施設地権者会 事務局長 門馬好春