【ウィメンズマーチ東京2022実行委員会】
ここ数年、ジェンダー平等への関心は高まり、ジェンダー平等社会実現のために声を上
げる人が増えています。
例えば、2021年2月、森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会前会
長による女性差別発言に対する批判は、かつてないほどに高まりました。
いまでは、経済界においてもダイバーシティの重要性が謳われ、「経済成長の原動力は
女性活躍である」との認識の下、ポジティブアクションや「ジェンダー投資」などに注目が集まっています。
日本のジェンダーギャップ指数(WEF)は156か国中120位(2021年)と低いものの、以
前は、ほとんど話題になることもなかった本指数が、毎年ニュースで取り上げられるよう
になったこと自体が、ジェンダー平等社会の実現に貢献するかもしれません。
国連が2030年までの目標として定めた持続可能な17の開発目標SDGsの「目標5」にはジ
ェンダー平等が掲げられ、あらゆる業界でこれに関連するとした取り組みが始まっています。
アメリカでは初めて女性が副大統領に選ばれました。
日本でも労働組合の全国中央組織で初の女性会長が誕生するなど、「女性初」が続々と
登場しています。
それでは、このような動きのなかで、当の女性たちは十分にエンパワーされ、ジェンダ
ー平等社会の実現はもう目の前だと喜ぶべきでしょうか。
この間、女性たちの日常には、どんな変化があったでしょうか。
巨額の税金を投入して開催されるオリンピック・パラリンピック。その2020東京大会が、多くの反対を押し切って強行されました。
ワクチンや検査などの医療資源が優先的にこのメガ・スポーツイベントに注がれた一方
で、必要な医療・介護を受けられず、厳しい環境におかれ、命を落とした人々さえいます。
それらのなかには女性・障害者・高齢者が偏在していたにもかかわらず、大会は「ジェ
ンダー平等、多様性と調和」が謳われ、女性やLGBTQの参加が「レガシー」だと喧伝されています。
コロナ禍でDVを含むジェンダーに基づく暴力は増加し、より弱い者をターゲットにした
事件が続いています。
男女間の賃金格差に加え、正規雇用とそうでない働き方の格差が広がる中で、各地の相
談会には、シングルマザーや不安定な条件で働く若者など、職と食、そして住まいに困り果てた、たくさんの女性が集まっています。
こうした支援の場にたどり着くことのできない、安心できる居場所のない若者・女性が
自ら命を絶つことも続いています。
女性が多くを担っているケアと無償労働の負担はコロナ禍でさらに増加する一方で、生
理用品や避妊のための選択肢、緊急避妊薬や安全な経口中絶薬など、女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツに必要不可欠な資源を安全に安価に入手する権利は侵害され続けています。
2020年11月に起きたベトナム人技能実習生の孤立死産事件は、日本におけるこうしたリ
プロダクティブ・ヘルス・ライツの課題に、技能実習生や外国人労働者への深刻な人権侵害が重なっているにも関わらず、出産した女性に有罪判決が下っています。
世論調査で過半数が賛成している選択的夫婦別姓は未だに導入されず、女性差別撤廃条
約の選択議定書も批准されず、戦時性暴力の問題は解決へ向けた議論をすること自体が難しい状況です。
あらゆる分野の意思決定レベルへの女性参加は遅々として進まず、昨年の衆議院選挙の
結果、女性議員比率は後退してしまいました。
ジェンダー平等政策を選挙に勝つための道具としてしか認識しない、つまり、勝てなけ
れば意味のない政策と見なすような言説まで出てきています。
このような現実に向き合えば、「女性活躍」というスローガンを掲げる政府、自治体、
企業等の多くの組織は「やってる感」ばかりで、ほとんどがパフォーマンスに終始しているような状況であることは明らかです。
男性中心社会が変わるような気配は感じられません。
私たちは、役に立たないスローガン、変化の伴わないパフォーマンス、口先だけのジェ
ンダー平等、見せかけのダイバーシティはいりません。
あらゆる格差が埋まらないことに対する言い訳は聞き飽きました。
権力を行使できる立場にいる人は、ジェンダー平等を一秒でも早く、実行し、実現し、
成果を出してください。
私たちは、デタラメで、やる気のない、フリだけの「男女共同参画」「女性活躍」には
満足しません。
現在、引き続き深刻な問題として、偏見に基づくトランスジェンダーへの攻撃がありま
す。
2019年にはウィメンズマーチ東京に関連付けてトランスジェンダーに対する差別を煽る
ような書き込みがありました。
今年のマーチでもトランスジェンダーに対する差別的・暴力的な言動は認めません。
私たちは、トランスジェンダーを含む多様な人たちと共に平等で公正な社会を目指しま
す。
最後に、あらゆる場所で、変化を起こすために、日々もくもくと努力を続けるすべての
フェミニストに賛辞とエールをおくります。
男性中心社会がほとんど何も変わっていないのは明らかですが、仲間は少しずつ増えて
いると感じています。
諦めることを知らないのがフェミニストですが、あえて呼びかけたいと思います。
これからも諦めずに共に歩みを進めましょう。
2022年2月20日ウィメンズマーチ東京・熊本・大阪・名古屋