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【Burning Issues】「韓国は約束を守らない」のか?~日韓請求権協定と日本政府20191004

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安倍首相も河野前外相も菅官房長官も口をそろえて「韓国は約束を守らない」、日韓請求権協定で徴用工の請求権は消滅しているから、あとは韓国内で処理するように、と言います。しかし、日本政府は日本国内で起こされた徴用工の賠償請求訴訟で「日韓請求権協定で請求権が消滅している」と主張したことは一度もありません。
国際法学者である阿部浩己明治学院大学教授をお迎えし、日韓請求権協定では、誰のどのような請求権が消滅させられたのか、請求権協定が解決したという「8項目」のなかに徴用工の個人請求権も含まれたのかを解説し、日韓請求権協定と日韓両政府の50年間の主張を敷衍して、徴用工問題の解決の道を考えます。
奇異に感じられますが、日本で行われた徴用工訴訟で日本政府が「日韓請求権協定で請求権は消滅した」と主張したことは一度もありませんでした。なぜでしょう。戦後繰り返された「日本国民が原告の」原爆被害訴訟、シベリア抑留賠償請求訴訟などで、日本政府は、「サンフランシスコ平和条約や日ソ宣言に請求権を放棄する条項があるとしてもそれは国家が請求できないだけで個人の請求権は残っている、だから、賠償してもらいたかったら、アメリカででもソ連ででも訴訟をしてアメリカやソ連からとればよい、日本政府に補償を求めることはできない」と主張してきました。かなり冷たい対応です。ところが、日本政府のこの理屈に基づいて、90年代以降、韓国や中国の人たちが日本で賠償請求を起こすようになると、困ったことになりました。そこで、政府は矛盾を避けて、20世紀中は、請求権はなくなっていないことを前提に裁判所で請求を認めない理屈を編み出してきたのです。そして、21世紀になると、さらに「請求権はなくなっていないが、裁判所で請求することはできない」という判断を裁判所はするようになりました。それでも、徴用工の請求権自体が請求権協定でなくなったという主張を国がしたことはありません。今になって、「協定によってもともと消滅していた」というのは、いかにも強弁と思われます。「韓国は約束を守らない」というにはやや苦しい日本政府の姿勢だったと言わざるを得ません。
他方、韓国も考え方が一貫していたかというと、微妙なところがあります。請求権協定が結ばれたのは、韓国が軍政、軍部独裁の強権政権時代でした。この時、韓国政府は、徴用工の請求権は請求権協定で失われていることを前提に法整備をし、死亡者だけを対象に極めてわずかな賠償の支払いをして乗り切ろうとしました。これには、徴用工の人たちの不満は残りました。その後民政に移行して国家規模で調査が進む中で、韓国政府は、請求権協定で消滅したとされる韓国民の権利の範囲に、原爆被害や従軍慰安婦など人道的犯罪による被害についての請求権は含まれない、というようになりました。確かに、請求権協定が解決した問題として掲げる「8項目」には、原爆被害者や従軍慰安婦の問題は含まれていませんでした。しかし、それでも徴用工問題は「8項目」に含まれ、解決されているのではないかと考えていた節があります。徴用工の人たちは、このような韓国政府の解釈には納得せず、請求権が残っていることを前提として企業に対して訴訟を起こしました。これを受けて、大法院は、2012年(2018年ではありません)、請求権協定締結の時には、植民地支配については、日本は正当だったと主張し韓国は不当・違法だったと主張し、両者の評価が一致せず、請求権協定の範囲には「植民地支配に基づく」請求権は含まれていなかったと判断しました。その結果、総動員令など植民地支配のもとで徴用された人たちの受けた損害の慰謝料については解決済みとは言えない、という判決になりました。韓国の裁判所も、請求権協定を前提に、徴用工の請求を認める法理論を考え出し、それは一つの理屈として否定できないところがあります。
日韓の対立は感情的なレベルに達し、解決の見通しは立ちません。しかし、本来、この問題は、日本の裁判所も認めている劣悪な非人道的境遇にあった徴用工の人たちへの補償を両政府がどう考えるかという視点で見る必要があります。国家間のメンツや歴史認識の対立に焦点を合わせていてはいつまでも解決しません。亀裂を広げるのではなく、今ある一致点を深めて、人権問題としての解決に舵を切るべきではないでしょうか。
2019年10月4日収録 お話をうかがう中で当初予定していたタイトルがそぐわなくなり、公開にあたって変更しました。映像内のタイトルのスライドが異なります。